Brian Eno『Ambient 1: Music For Airports』/ ブライアン・イーノ『ミュージック・フォー・エアポーツ』


ブライアン・イーノ 『アンビエント1: ミュージック・フォー・エアポーツ』
Brian Eno – Ambient 1: Music For Airports

発売: 1978年
レーベル: E.G., Polydor

 ブライアン・イーノが1978年に発表した6枚目のスタジオ・アルバムであり、タイトルに「Ambient 1」とあるように、彼の一連のアンビエント作品の幕開けとなる1作です。

 『Ambient 1: Music For Airports』というタイトルが示すとおり、空港で流れることをイメージして作られたアルバム。4曲が収録されていますが、番号が付されているだけで、それぞれに曲名はありません。

 「空港のための音楽」ということですが、では空港とはどのような場所でしょうか。ごく簡潔に言うなら、多くの人が長距離の移動のために集う場所。そして、空港に集う人々は、これから旅立つ人は期待や不安を持ち、旅路を終えて帰ってきた人は安心感と疲労感を持っていることでしょう。

 そんな人々が行き交う空港という場所にふさわしい音楽とはなにか、と考えながらこのアルバムを聴くと、また聴こえ方が違ってくるのではないかと思います。

 出発を待つ人々の不安を和らげ、帰ってきた人の疲労を癒し、なおかつ飛行機の飛び立つ音や、人々が出す音にも馴染む音楽。『Ambient 1: Music For Airports』は、そのような場になじみながら、優しく響く音楽です。

 1曲目はピアノの音が、空間を埋めるように、ぽつりぽつりと、ゆっくり優しく鳴り響きます。隙間の多いピアノの音を包み込むように、シンセサイザーも音を紡いでいきます。

 2曲目は、ボーカル(というより素材としての声に近い)とシンセサイザーのロングトーンによって、1曲目とは違ったかたちで、空間に浸透していくような音像。

 3曲目は、1曲目と2曲目を同時に鳴らしたようなサウンド。ピアノの音にボーカルが重なってきたときには、クラシックで主題が戻ってきたような、ジャズでテーマに戻ってきたような、安心感と高揚感を覚えました。1曲目のピアノのミニマルなリズムに、2曲目のボーカルの広がりのあるサウンドが溶け合い、つかみやすい音楽を形作っていきます。

 4曲目は、シンセサイザーのみの演奏。暖かみを感じる電子音が幻想的に響き、リラクシングな雰囲気が広がっていきます。

 空港を意識して聴くと違った聴こえ方がするのでは、と先述しましたが、なにも考えずに音だけに耳を傾けていても、十分に楽しめる作品です。ロックやポップスのような明確な形式を持たない音楽ですから、誰にでもオススメできるかというと、そうではありませんが、アンビエントに興味がある方には、自信を持っておすすめするアルバムです。

 個人的には「ヒーリングミュージック」のような、音楽の機能を限定しすぎた呼び方は好きではないのですが、ヒーリングミュージックとして聴くことも可能かと思います。

 音楽のフォームを気にすることなく、音自体に包まれるような、音楽が優しく部屋を満たしていくような感覚を、ぜひ体験してみてください。

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